大阪中央郵便局

大阪中央郵便局ファサード

【DATA】

  • 所在地:大阪市北区梅田町
  • 設計:逓信省営繕課(吉田 鉄郎)
  • 施工:大林組
  • 竣工:1939年

 旧逓信省営繕課の建築家 吉田鉄郎は逓信省の多くの建築を手掛けましたが、なかでも東京と大阪の二つの中央郵便局によって高い評価を得ました。そのどちらも現役で活躍しています。
 東京中央郵便局が緩やかなカーブを描く不整形な敷地に沿った流れるようなファサードに白色のタイル張りであるのに対して、大阪は比較的整形に近い敷地の二つの道路に面して直線を基調としたファサードに褐色がかったグレーのタイル張り。同じ設計者、用途も同じだというのに形態、材料ともに対照的です。

大阪中央郵便局窓の詳細
大阪中央郵便局 ペントハウス
大阪中央郵便局 階段室外部

 庇やペントハウスに至るまで徹底的に直線で構成された外観は、装飾的な要素もまったく無く一見地味な印象を受けます。これは日本の伝統的な木造建築の工法の一つである真壁構造(壁厚を薄くして柱型が外部に現わされる構造の壁)から着想したものと言われていますが、このようなデザインは、柱梁といった構造部材を素直に外部に現わすため、各部材どうしの比例関係が建物の美しさを決定付けます。
 柱割りは窓ガラス4枚分に均等に割られる一方、内部空間の要請に応じて異なる階高には、5、4、4、3、2段と上階に行くほど低くなる明快な比例関係を持たせ、最上部の大きく張り出した庇は建物全体を引き締めるように大きく張り出します。このような明快な比例関係によって構成された全体像は、均整の取れたすばらしいプロポーションとなっており、細部から全体に至るまで建築家の腕の確かさがうかがえます。
 一方で、南面、東面で徹底された厳密な比例関係は、西側の柱割が機能的な要求から約1.5倍に広げられており、近代建築のスローガンであった合理性の追求と美の追求のせめぎあいの跡を見ることができます。