【DATA】

• 所在地：大阪市中央区平野町
• 設計：安井 武雄
• 施工：大林組
• 竣工：1933年

　大阪のメインストリート御堂筋に面して建つガス会社の本社ビル。近代大阪を代表する建築家　安井武雄氏の代表作であるとともに、近代オフィス建築としても代表的な建築です。乳白色のタイル張りの上層部と黒御影石の基壇部のコントラストも美しく、鼻先が黒く塗られた水平方向を強調する庇、そしてコーナーのカーブが特徴的です。この建物は単にガス会社の本社というだけでなく、展示・実演スペースやホール、食堂なども備え、かつては「ガス飴」というお菓子を販売するなど、ガス会社の広告塔としての役割も大きかったようです。　

　安井武雄氏自らが「使用目的および構造に基ける自由様式」と称したそのデザインは、階層を分割する庇、リズミカルに連続する縦長の開口部と柱型、 2階とに見られる大きなガラス面、角に丸みを持たせた等など、近代の建築としては比較的オーソドックスなエレメントで構成されています。
　にもかかわらず、この建物が確固たる地位を築いてるのは、の形と大きさ、、放物線断面の柱型、ボーダーの絶妙な厚みなどに見られるみごとなプロポーション、そしてそれらのによるものでしょう。
　村野藤吾氏は「都市建築の美の極致・・・・縦と横と、面と線との取り扱いなどはじつに見事であるし、その手堅さにいたっては完璧に近い」と称えたといいます。また、昭和41年に竣工した北側の増築部分は、乳白色のタイルと黒御影石との対比や、ボーダーで水平方向を強調する手法はそのままに、で構成されたファサードとなっていますが、も自然で、御堂筋に緊張感のある表情を見せています。