materia

2005-03-27

日本工業倶楽部会館・三菱信託銀行本店ビル
〜歴史的建築物保存の事例 No.02〜

日本工業倶楽部会館・三菱信託銀行本店ビル 全景

【DATA】
  • 住所:東京都千代田区丸の内1丁目
  • 敷地面積:8100.39平方メートル
  • 延べ面積:109,830平方メートル
    (三菱信託銀行本店ビル 96,760平方メートル、日本工業倶楽部会館 13,070平方メートル)
  • 容積率:1231.81%
  • 設計:三菱地所設計
  • 竣工:2003年
 1920年に竣工した日本工業倶楽部は、三信ビルの設計者でもある横河工務所 松井貴太郎の設計による建物。3層構成の外観は、パラッツォ等のヨーロッパの建築を範としていると思われますが、細部の装飾は、西洋建築の様式を崩した幾何学的なものとなっていて、全体的に直線的で硬質な意匠となっています。
 2000年から2003年にかけて、隣接して建つ三菱信託銀行本店ビルの建替えと一体の事業として保存・再生されたもので、この保存・再生にあたって国の登録有形文化財として登録されるとともに、明治生命館・丸の内My Plazaと同様、特定街区制度が適用され、基準容積率1000%から、1234%に容積率が割増されています。(基準容積率は都市計画決定された平成12年当時のもの。2005年現在は1300%)


日本工業倶楽部会館 外観

日本工業倶楽部会館と三菱信託銀行本店ビルとの取合い

 日本工業倶楽部会館は、不動沈下による傾きが生じていたのに加えて、一部の柱が座屈して鉄筋が顕わになる等、保存が難しい状態だったため、保存されているのは西側3分の1のみとなっています。残りの3分の2は、仕上げを再利用しながら元の意匠を再現して建替えられものです。
 そのためか、現在の姿は一見してあまりにもきれいすぎて、テーマパークに建つ建物のように見えてしまいます。また、ガラス張りの超高層ビルがスクラッチタイルとテラコッタで覆われた建物に覆いかぶさる様子は、正直言って異様な光景であることは否めませんが、耐震上の問題を解決するために免震装置を介して高層棟の地階の上に乗せている事情もあり、解決策としては他に選択肢は無かったのかもしれません。
 一昔前に見られた近代建築の外壁だけを保存する手法と比べれば、保存された建築物の独立性が保たれていることは評価されますが、結局のところレプリカをつくる「再現」については、未だに賛否両論の意見が出されており評価が難しい問題です。(京都工芸繊維大学の中川教授が、レプリカ保存に対する問題提起をされています。[第一勧業銀行京都支店のレプリカ保存を考える])
 三信ビルの場合、耐震性についての詳細な調査が待たれますが、維持管理がよかったのか目視ではコンクリートの劣化や鉄筋の露出等の大きな損傷は見られません。構造的に問題無ければ、事務室は利用者のニーズや設備技術の進歩に即して更新しながら、外観とアーケードはできる限りそのままの形で残していくことが懸命に思われます。
posted at 03:02:54 on 2005-03-27 by qaz - Category: 三信ビル保存プロジェクト

Comments

かすたどん wrote:

はじめまして。
webの検索でこちらを見つけ、最近ちょくちょく拝見しておりました。
かすたどんと申します。

今通っている会社が東京駅の日本橋口の近くということもあって、
最近、丸の内近辺をよく歩いています。
すばらしいデータの数々と情報群に見とれています。
事後承諾になってしまったのですが、
わたしの書いているblogの本文中にリンクさせていただきました。↓
http://blog.kansai.com/kasu...

もし不適切なリンクの仕方であったら、ご指摘くださいませ。

では。
2005-06-05 22:47:24

qaz wrote:

かすたどんさん、はじめまして。
コメントとリンクありがとうございます。
かすたどんさんの記事も拝見しました。
10年前の出来事を建物が思い出させるなんて、
記憶と場所との結びつきというのは、
面白いですね。
これからもよろしくお願いします。
2005-06-07 01:04:06

Add Comments