せんだいメディアテーク

ファサード

【DATA】

  • 所在地:仙台市青葉区春日町2
  • 設計:伊藤豊雄建築設計事務所
  • 施工:熊谷・竹中・安藤・橋本JV
  • 竣工:2000年

 ケヤキ並木が続く仙台のメインストリート「定禅寺通り」に建つ図書館、展示施設、映像メディアセンターの複合施設。多様化する情報を集約した次世代のためのライブラリーとして計画されたものです。
 1995年、このライブラリーに相応しい設計者を選定するために公開コンペが実施され、伊藤豊雄氏の案が選定されました。コンペ案で提示された模型は軽やかで幻想的な提案でしたが、実際の建物は軽やかさよりもモノとしての力強さの方が前面に出ていて、コンペ案とは印象は違いますがすばらしい空間となっています。

外観
照明が空間に浮遊感を与える
スピード感のある1階
階段のチューブ見上げ

 なんと言っても最大の特徴はその構造方式で、この建物の最も重要な要素となっています。鋼製パイプを網状に組立てた12本の垂直なチューブによって強い剛性を持つ床を支えるという独創的なもので、そのチューブは太さや網状の組み方もそれぞれ異なる上に配置もランダムで、一般的に広く採用されているラーメン構造(柱−梁による骨組み式の構造)が規則的な繰返しからなるのに対して、構造体自身が空間に不規則性あるいは偶発性を生み出す重要な役割を担っています。
 また、その構造体を覆う外壁は、外と内を明確に区別する「壁」というよりも、面によって異なる様々な透明度によって外と内との境界に変化を与える皮膜というほうが適当かもしれません。
 このような要素で作り上げられた空間は、特定の用途や機能と1対1で対応する部屋を極力持たず、必要に応じてカーテンや可動式の間仕切りによって空間が変化するよう計画されていて、用途や機能等による空間のヒエラルキーを持っていません。 かといって、単なる無機質で均質な空間が繰り返されるかというとそうではなく、前述の通り構造体そのものが空間を規定する重要な要素となりながら、照明や家具等と合わさって、他のどこにもない特徴のある空間を生み出しています。
 ここで示されている新しいアイデアの実現には様々な技術的な解決が盛り込まれています。特に構造体の組立ては、通常よりも厳しい施工精度が求められ、造船の職人の技術無くしてはできなかったといいます。これだけ技術が進んだと言われる世の中にあって、この建物が職人の手腕に支えられて生まれたという事実は、現代の建築に欠けている「ものづくり」の姿勢の重要さを示しているように思えます。