大学セミナーハウス

本館 全景

【DATA】

  • 所在地:東京都八王子市下柚木
  • 設計:吉阪隆正+U研究室
  • 施工:清水建設
  • 竣工:1965年〜

 静かな自然環境の中に教員と学生の交流の場を提供することを目的として、多摩丘陵に設立された研修施設です。 宿泊施設、研修施設、管理施設、食堂などの10以上の施設が、造成をできるだけ行わずに丘陵地の地形を生かしながら分散配置され、自然環境と一体となった空間を作り出しています。 20年以上(8期)をかけて建設されてきた施設群には、一つとして同じ形が無いのにもかかわらず、不思議な統一感が生み出されています。

本館の開口部
本館の目
国際セミナー館 外観
国際セミナー館の外観
図書館 斜面側の外観
図書館 斜面側の外観

 多様なデザインが展開する施設群の中で、最もインパクトのあるのが「本館」です。ピラミッドを逆さにして地面に突き刺したような形態は、見るものに強烈なインパクトを与えます。デザインの仕方次第でシャープな印象を与えるはずの形が、まるで地面から生えてきたように見えるのは、自らを「乾燥ナメクジ」と評した吉阪隆正氏らしいところです。、この本館は、建設から40年近くが経ちコンクリートの劣化がひどかったため、数年前に修繕されたのですが、そんな修繕跡などものともしない「形のちから」が宿っているようです。
 さらに本館以外の建物に目を移してみると、

  • 中央セミナー館(第1期/1965年)
  • ユニットハウス(第1期/1965年)
  • サービスセンター前の便所(第1期/1965年)
  • 図書館(第2期/1967年)
  • 講堂(第2期/1967年)
  • 教師館(第3期/1968年)
  • 長期セミナー館(第4期/1970年)
  • 野外ステージ(第5期/1970年)
  • 国際セミナー館(第7期/1978年)
  • 交友館(第7期/1978年)

などなど、その独特の形態と地形を生かしたデザインは目を見張るばかりです。
 また、単に外観の形態に凝っているだけでなく、細部も凝ったディテールが随所に見られ、照明、階段(1,2)、開口部トップライトだけでなく、エキスパンション・ジョイント(構造的な解決策として建物同士の縁を切った箇所の取合いの部分)に至るまで、設計者のこだわりや遊び心が感じ取れて見所は尽きません。中でも手すり押し手などはバリエーション豊かで、直接手が触れることを徹底的に追求してデザインされています。
 設計者の吉阪 隆正は、前川 國男、坂倉 準三とならびル・コルビジュエの弟子の一人で、ヴェネツィアに作品を残す唯一の日本人建築家でもあります。