同潤会 青山アパートメント

青山アパート ファサード

【DATA】

  • 所在地:東京都渋谷区神宮前4丁目
  • 設計:同潤会建築部営繕課
  • 施工:神谷太一郎他
  • 竣工:1926〜27年

 ロケに使われたりマスコミで表参道といえば必ず取り上げられる有名な建物で、たとえ名前を知らなくても目にしたことがある人は多いと思います。ツタが這うファサードはケヤキ並木と一体となり、表参道のランドマーク的存在として親しまれていました。大企業の建物でも公共の建物でない建築が、都市のランドマークとなった例としてはもちろん、集合住宅が都市景観として定着した希少な例でしたが、2003年に建替えのため取り壊され、現在はその姿を見ることはできません。

青山アパート ファサード
青山アパート 裏側
青山アパート 階段から表参道を見る

 同潤会のアパートがつくられた背景には、関東大震災で厖大な被害を受けた東京における住宅の供給、都市の不燃化、そして被災者にへの住空間の提供などがありました。しかしながら、それが70年以上の長きに渡って都市で生きていくうちに、誰が意図するではなく店舗が入るようになり、その従来の機能などものともせず、表参道を訪れる人々で賑わう空間をつくり出しました。
 扉の大きさや天井の高さなどの各部の寸法は、現代の住宅と比べると非常に小さく、当時と現代の人の大きさの違いを感じさせます。しかし、機能や設備では図ることのできない空間の豊かさがあったからこそ、青山を代表する都市景観となりえたといえるでしょう。
 国内の集合住宅は異物としての要素が強い場合が多く都市景観を代表する風景となった例は非常に少ないですが、この青山アパートは集合住宅が都市の素材となり得た類い稀な例だと思います。取り壊しから2年が経ち、建替えプロジェクトの建設工事が進められていますが、はたして表参道の新しい顔となりうるかどうか注目が集まっています。

青山アパート 裏側 青山アパート 窓のディテール
青山アパート 入口ポーチ 青山アパート 入口